2026/01/20 15:16
はじめに
前編では、
ウイルス研究者として世界と向き合った根路銘国昭の歩みを紹介しました。
後編では、
定年退官後、沖縄に戻った根路銘が取り組んだがん研究と植物研究に焦点を当てます。
2000年、根路銘は国立感染症研究所を定年退官します。
国内外の大学からは、学部長就任などの誘いもありました。
しかし、その後の人生を大きく変える出来事が起こります。それはーー恩師の死でした。

末期がんと診断された恩師の姿を前に、根路銘はこう語っています。
「がんそのものよりも、抗がん剤の副作用の方が、はるかにつらそうだった」
新たな研究テーマーーがん
この体験をきっかけに、根路銘は新たな決意を胸に抱きます。
「副作用のない抗がん剤をつくる」
次の研究の舞台として選んだのは、自ら生まれ育った沖縄でした。
沖縄県名護市。やんばると呼ばれる自然豊かなこの地で、
根路銘は生物資源研究所を拠点に、研究者として第二の人生を歩み始めます。
やんばるの森での研究
ウイルス学者として世界を舞台に活躍してきた根路銘にとって、
がん研究はまったく異なる分野でした。
「副作用のない抗がん剤には、天然素材が不可欠だ」
そう考えた根路銘は、弁当を片手にやんばるの森へ入り、植物の採取を始めます。
集めた植物は、2,000種類以上。
採取、抽出、検証ーー
すべてが地道な作業の繰り返しでした。
センダンとの出会い
研究を始めておよそ2年後、
根路銘はある植物に強い可能性を見いだします。
それが、沖縄に自生する落葉広葉樹、センダンでした。

センダンの葉から抽出した成分が、
がん細胞に作用すること、
さらにインフルエンザウイルスを不活化することを確認します。
2009年
「抗腫瘍剤」
「インフルエンザ予防・治療剤」
として特許を取得しました。

メカニズム解明への挑戦
しかし、「なぜセンダンががん細胞に効くのか」
そのメカニズムはすぐには解明できませんでした。
2014年、米国の医学誌に投稿した論文は却下。
「悔しくて仕方がなかった」と、根路銘は振り返ります。
そこで訪ねたのが、OIST(沖縄科学技術大学院大学)の山本 雅 教授でした。
二人の共同研究が始まります。
実験を重ねる中で、センダンの成分を加えたがん細胞が、
自らを分解して死に至る現象が確認されました。
それは、オートファジーと呼ばれる作用でした。

研究の到達点
この研究成果は、センダン葉抽出物が39種類のヒトがん細胞に効果を示すことを実証し、
米国の医学誌「American Journal of Cancer Research」に掲載されます。
論文のタイトルは、「亜熱帯沖縄諸島に自生するセンダン葉抽出物の抗がん作用」。
医薬品化には至らなかったものの、研究成果は健康飲料として商品化され、
現在も多くの人に利用されています。
ウイルス研究から始まり、
晩年は沖縄の自然と向き合いながら植物研究へ。
「人の命を守る」という一貫した姿勢のもと、
根路銘国昭は研究人生を歩み続けました。

その研究と想いは、
今も静かに受け継がれています。
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本記事に掲載している写真・画像の一部は、実際の資料・写真をもとにしたイメージ再現として、AI生成画像を使用しています。
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